久しぶりにご購入頂いた車の納車がありました。

滅多に売れない私ですので、気合を入れて洗車に挑んだのですが…

 

【お天気は最高に良い!けれども…】

本来ならそのお客様は午前中に来店予定でしたが、

急にお仕事が入ったとの事で、夕方にご来店頂く事になりました。

時間がたっぷり出来た私は、再度入念に掃除機をかけ、

洗車機にも入れ、雲一つ無い青空の元、丁寧に車内外を

拭いていました。

 

【春の嵐に…】

 

ただその日は風がとても強く、道路沿いに立ててある幟も

パタパタと大きな音をたてていました。

車の外側をあらかた拭き終えた私は、車内の至る所を

拭いて回ろうと、5枚のドアを全て開放し、トランク内を

拭き始めました。…と、その時、更に強い風が私に体当たりを

仕掛けて来ました。 瞬く間にシートに掛けてあったビニールや

足元に敷いてあった紙マットが春風に乗って車外に舞い上がりました。

私は慌ててそのビニールシートや紙マットを追いかけました。

捕まえかけては逃げられ、踏みかけては逃げられを繰り返し、

軽いコントの様相を呈してましたが、何とかそいつらを確保しました。

定位置に戻し、今度はきちんとドアを閉め、再び車内を拭き始めた私でしたが

ふと、ある事に気付きました。

 

【…無い…】

…無いんです… 車庫証明ステッカー(たいてい車のリアガラスに

貼ってあるコップの下に敷くコースター位の丸いシールです。)が…

車内を隅々までライトで照らして探して見ても見当たりません。

どうやら意地悪な春風に誘拐されたようです。

私は直ぐに店長に状況を報告しました。

沢田千可子の“会いたい”よろしく半分笑って、半分真顔で

店長は「見つからないなら仕方ないな。お客様には正直に

事情を説明して、再発行の手続きを取れ」と、私に指示。

 

それからお客様が来店された夕方までの時間はとても長く感じられました。

本来なら笑顔でお出迎えをし、「本日はご納車おめでとうございます!」

みたいなご挨拶から始まるのですが、今回ばかりはまず

お詫びから入るという、なんともトホホな納車式となりました。

 

幸いそのお客様はとても温厚な方でしたので、私の説明や

ご提案をにこやかに聞いてくれましたが、いつもの

5倍くらい、私は終始頭を下げてました。

 

新しい車に乗って帰られるお客様をお見送りする頃には

辺りは既に黄昏れてました。

 

帰路につくお客様と車に深々と頭を下げ、

そして再び持ち上げた私の顔に当たる風は、

とても冷たく、また痛く感じました。

 

私に追い風が吹く日は、まだまだ先の様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者

イチロク兄さん

うだつの上がらないまま車の営業を10年以上しているジジイです。 日々感じた事や思った事等、徒然なるままにしたためておりますので よろしければお立ち寄りください。

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